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オフショア開発に消費税はかかる?課税・不課税の判断基準や源泉所得税との違いを解説

消費税

オフショア開発を検討する企業にとって、海外企業への開発委託に消費税がかかるのかどうかは実務上の重要な論点です。消費税だけでなく、ソフトウェア開発特有の「源泉所得税」の問題も見落とされやすく、税務調査で指摘を受けるケースも少なくありません。

本記事では、オフショア開発における消費税の課税・不課税の判断基準から、源泉所得税との違い、経理処理への影響、税務で失敗しないためのポイントまで体系的に解説します。 自社のオフショア開発における税務処理を見直す際の参考にしてください。

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オフショア開発における消費税の取り扱い

オフショア開発の消費税を正しく処理するには、取引が「国内取引」と「国外取引」のどちらに該当するかの判定(内外判定)が出発点となります。ここでは、海外企業への開発委託における消費税の基本的な考え方と、契約形態による違いを解説します。

  • 海外企業への開発委託は原則「不課税取引」
  • 国内取引と判定されるケース
  • 契約形態による消費税の違い(請負・準委任・ラボ型)

海外企業への開発委託は原則「不課税取引」

消費税が課税されるのは、「国内において事業者がおこなう資産の譲渡等」に該当する取引です。役務の提供は、原則として「役務が提供された場所」により国内取引かどうかを判定するため、海外の開発拠点でプログラミングやテスト等の役務提供が完結する典型的なオフショア開発は、一般に「国外取引」と整理され、消費税は課税されません(不課税取引)。

ただし、役務提供場所が明確でない場合などは、提供者の事務所等の所在地を基準に判定する取扱いもあるため、契約・実態に即した整理が必要です。

国税庁の規定によると、国外取引については消費税の課税対象外となります。オフショア開発では、ベトナムやフィリピンなど海外の開発拠点でプログラミングやテストがおこなわれるため、役務の提供場所は国外と判定されるのが一般的です。

不課税取引は「非課税取引」とは異なる概念である点にも注意が必要です。非課税取引は課税売上割合の計算で分母に算入されますが、不課税取引は分母にも分子にも算入されないため、経理処理上の区分を正確におこなう必要があります。

国内取引と判定されるケース

オフショア開発であっても、取引の実態によっては国内取引と判定され、消費税が課税される場合があります。海外企業のエンジニアが来日し、日本国内で役務が提供される部分がある場合は、その国内提供部分について消費税の課税対象となる可能性があります。

また、役務の提供が国内と国外にまたがっておこなわれる場合は、それぞれの対価が契約で合理的に区分されていればその区分に従います。合理的な区分がされていない場合は、役務の提供をおこなう者の事務所等の所在地で判定される仕組みです。

なお、クラウドサービス利用料や広告配信など、いわゆる「電気通信利用役務の提供」に該当する取引は、別ルールで内外判定が行われます。一方で、一般的なソフトウェアの「制作(開発)委託」は、通常は電気通信利用役務の提供に該当しない例として整理されています。

そのため、オフショア開発の論点は「開発(制作)委託の役務提供がどこで行われたか」を軸に考え、SaaS利用料等の“デジタルサービス利用”が混在する場合のみ、別論点として切り分けて検討するのが安全です。

契約形態による消費税の違い(請負・準委任・ラボ型)

オフショア開発で用いられる主な契約形態には、請負契約、準委任契約、ラボ型契約の3種類があります。いずれの契約形態であっても、海外企業との取引で役務の提供が国外でおこなわれていれば、消費税は不課税となるのが原則です。

請負契約は成果物の完成・納品を目的とする契約であり、開発作業が国外でおこなわれていれば不課税取引に該当します。準委任契約は開発業務の遂行そのものを委託する契約形態で、役務の提供場所が国外であれば同様に不課税です。

ラボ型契約は、海外拠点に専属の開発チームを確保し、一定期間にわたって開発リソースを提供する形態です。エンジニアが海外拠点で作業をおこなう限り、役務の提供場所は国外と判定されます。ただし、エンジニアが日本国内に常駐して作業をおこなう場合は国内取引と判定されるため、契約時に作業場所を明確にしておく必要があります。

オフショア開発で注意すべき源泉所得税の扱い

オフショア開発の税務で見落とされやすいのが源泉所得税の問題です。消費税とは別に、取引内容によっては源泉徴収義務が発生するケースがあります。ここでは、源泉所得税の判断基準と対処法を解説します。

  • 「役務の提供」と「著作権の譲渡」で異なる課税判断
  • 租税条約を活用した源泉所得税の軽減・免除
  • 著作権の帰属を契約で明確にする重要性

「役務の提供」と「著作権の譲渡」で異なる課税判断

オフショア開発の対価が「役務の提供」に対するものか「著作権の譲渡」に対するものかによって、源泉所得税の取り扱いは大きく異なります。海外で提供される単純な開発作業(コーディングやテストなど)の対価は「国外での役務提供」と判断され、源泉徴収は原則不要である一方、開発成果物に伴う著作権の譲渡が認定されると、国内法上20.42%の源泉所得税が課税されます。

所得税法第161条では、著作権の使用料またはその譲渡による対価を国内源泉所得として定めています。オフショア開発で完成したソフトウェアの著作権が海外企業から日本企業に移転する取引と認定されれば、その対価は源泉徴収の対象となる仕組みです。

とくに問題になりやすいのは、役務提供と著作権譲渡の対価が渾然一体となっているケースです。役務提供と著作権等の対価が契約上・実態上で区分できないと、税務調査で不利な認定を受けるリスクが高まります。そのため、役務提供の範囲と、著作権(使用許諾・譲渡)に関する条項、対価の考え方を契約段階で可能な限り明確にしておくことが重要です。

租税条約を活用した源泉所得税の軽減・免除

著作権の譲渡と認定された場合でも、日本と委託先の国との間で租税条約が締結されていれば、源泉所得税の税率が軽減または免除される可能性があります。たとえば、日本とベトナム、フィリピン、中国などのオフショア開発主要国との間にはそれぞれ租税条約が存在し、使用料に対する源泉徴収税率が10%程度に軽減されるケースが一般的です。

租税条約による軽減措置を受けるためには、支払いを受ける海外企業(非居住者)が「租税条約に関する届出書」を、支払者の納税地の所轄税務署長に対して支払日の前日までに提出する必要があります。届出書の提出が間に合わなかった場合でも、後日「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することで差額の還付を受けることが可能です。

なお、国によって租税条約の設計が異なり、たとえば日印租税条約では「技術上の役務に対する料金(FTS)」に関する規定が置かれています。そのため、委託先がインドの場合は、他国と同じ感覚で「役務提供だから源泉不要」と決め打ちせず、条約条文と契約内容を照合して判断することが重要です。

著作権の帰属を契約で明確にする重要性

源泉所得税のリスクを適切に管理するためには、契約書において著作権の帰属と対価の区分を明確に定めることが極めて重要です。国税不服審判所の裁決事例では、開発委託費として支払った金額が著作権の譲渡対価に該当すると判断され、源泉徴収漏れを指摘されたケースが実際に存在します。

リスクを低減するためには、契約書の中で「創作性を伴わない機械的な開発作業の範囲」と「著作権の譲渡に該当する部分」を可能な限り区分して記載することが望ましいです。委託先が仕様書に基づいてコーディング作業のみをおこなう場合は、役務提供の対価として整理しやすくなります。

著作権の帰属条項があいまいなまま取引を進めると、後日の税務調査で不利な認定を受けるリスクが高まるため、契約締結の段階で税務の専門家に相談しておくことを推奨します。

オフショア開発の消費税が経理処理に与える影響

オフショア開発に伴う不課税取引の存在は、自社の消費税計算に影響を及ぼす場合があります。ここでは、経理処理上とくに注意が必要な3つのポイントを解説します。

  • 課税売上割合と仕入税額控除への影響
  • 簡易課税と原則課税の選択による納税額の違い
  • インボイス制度と海外取引の関係

課税売上割合と仕入税額控除への影響

オフショア開発の委託費は不課税仕入に該当するため、この支出に対する仕入税額控除は適用できません。不課税仕入は消費税の課税対象外であるため、国内の課税仕入のように支払消費税を控除することができず、消費税の納税額に直接影響する点に注意が必要です。

一方、不課税取引は課税売上割合の計算には影響しません。非課税売上は課税売上割合の分母に算入されるため割合を引き下げる要因となりますが、不課税取引は分母にも分子にも含まれない仕組みです。

ただし、オフショア開発の比率が高まることで、国内の課税仕入が相対的に減少し、仕入税額控除の総額が縮小する可能性があります。全体的な消費税の納税額への影響を把握しておくことが重要です。

簡易課税と原則課税の選択による納税額の違い

消費税の計算方法には、原則課税(本則課税)と簡易課税の2種類があり、どちらを選択するかによって納税額が大きく異なる場合があります。オフショア開発の比率が高い企業では、不課税仕入が多くなるため原則課税での仕入税額控除が少なくなり、簡易課税を選択した方が納税額を抑えられるケースがあります。

簡易課税では、業種ごとに定められたみなし仕入率を用いて仕入税額控除を計算します。システム開発業は「サービス業」または「製造業」に分類されることが多く、みなし仕入率は50%〜70%が適用されるのが一般的です。

どちらの計算方法が有利になるかは、課税仕入の構成比率やオフショア委託の割合によって異なるため、事前にシミュレーションをおこなったうえで判断する必要があります。

インボイス制度と海外取引の関係

2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、国内の課税取引における仕入税額控除の要件を厳格化するものです。典型的なオフショア開発(国外での役務提供)が「国外取引(不課税)」として整理される場合、インボイス制度(適格請求書)の要否以前に、消費税の課税対象外となります。

ただし、SaaS利用料等が混在し「電気通信利用役務の提供」に該当する場合は、特定課税仕入れ(リバースチャージ)など別の論点が生じ得るため、開発委託(制作)と分けて整理することが重要です。

ただし、オフショア開発に関連して国内の事業者に支払う費用(翻訳費、仲介手数料、国内での打ち合わせにかかるコンサルティング費用など)については、インボイス制度の対象となります。これらの費用で仕入税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が必要です。

オフショア開発に伴う支出を「不課税の海外取引」と「課税対象の国内取引」に正確に区分し、それぞれ適切な経理処理をおこなうことが求められます。

オフショア開発の税務で失敗しないためのポイント

オフショア開発の税務処理は、消費税と源泉所得税の両面で判断が求められる複雑な領域です。ここでは、税務上のリスクを最小化するための3つの実践的なポイントを解説します。

  • 契約書で取引内容と著作権の帰属を明確に定める
  • 国内取引と国外取引を正確に区分して管理する
  • 税務の専門家と連携して適切な処理体制を構築する

契約書で取引内容と著作権の帰属を明確に定める

オフショア開発における税務リスクの多くは、契約書の記載が不十分であることに起因します。契約書には、委託業務の範囲(役務提供の内容)、著作権の帰属先、対価の算定根拠(人月単価か成果物単位か)を明確に記載し、役務提供部分と著作権譲渡部分を区分できるようにしておくことが不可欠です。

とくに、仕様書に基づくコーディング作業のみを委託する場合は、その旨を契約書に明記することで、「著作権の譲渡」ではなく「役務の提供」として整理しやすくなります。著作権に関する条項があいまいな場合、税務当局から支払額全額が著作権の対価と認定されるリスクがあるためです。

契約書の作成段階から税務の視点を取り入れることで、後日の税務調査における指摘リスクを大幅に低減できます。

国内取引と国外取引を正確に区分して管理する

オフショア開発では、一つのプロジェクト内に不課税取引(海外での開発作業)と課税取引(国内でのコンサルティングや打ち合わせ)が混在するケースが多くあります。経理処理においては、支払いごとに「国内取引」「国外取引」を正確に区分し、消費税の課税・不課税を適切に判定する管理体制が必要です。

区分があいまいなまま処理を進めると、不課税取引に対して誤って仕入税額控除を適用してしまい、過少申告となるリスクがあり、逆に、国内取引に対する仕入税額控除の適用漏れも、結果的に消費税の過大納付につながります。

取引ごとの区分を明確にするために、請求書や発注書に作業場所や業務内容を記載するルールを設けることが効果的です。

税務の専門家と連携して適切な処理体制を構築する

オフショア開発の税務は、消費税の内外判定、源泉所得税の課税判断、租税条約の適用可否など、複数の税法が絡み合う高度な領域です。自社の経理部門だけで判断することにはリスクが伴うため、国際税務に精通した税理士や会計士と連携し、案件ごとに適切な処理方針を確認する体制を整えることが重要です。

とくに新たな委託先の国との取引を開始する場合や、契約形態を変更する場合は、事前に専門家の助言を受けることで、想定外の課税リスクを回避できます。租税条約の届出書の提出手続きについても、専門家のサポートがあれば確実に対応可能です。

定期的な税務レビューをおこない、処理の適正性を継続的に確認する仕組みを構築しましょう。

オフショア開発の委託先選びならブライセンへ

オフショア開発を成功させるためには、開発品質だけでなく、税務処理を含めた取引全体の透明性を確保できるパートナー選びが重要です。ブライセンは、ベトナムに開発拠点をもつオフショア開発企業として、契約形態の設計から著作権の帰属条件まで、税務リスクにも配慮した取引環境を提供しています。

請負契約、準委任契約、ラボ型契約のいずれにも対応可能であり、プロジェクトの特性に合わせた最適な契約形態を提案します。消費税や源泉所得税の処理に必要な情報を整理した契約書の作成もサポートするため、経理部門の負担軽減にもつながります。

オフショア開発の委託先をお探しの企業は、ぜひブライセンにご相談ください。

まとめ

オフショア開発における消費税は、開発作業が海外でおこなわれる限り原則として不課税取引に該当します。ただし、エンジニアの国内派遣や電気通信利用役務の提供に該当する場合は課税対象となるため、取引ごとの内外判定が欠かせません。

消費税とあわせて注意が必要なのが源泉所得税の問題です。開発委託の対価が著作権の譲渡と認定された場合は20.42%の源泉徴収が必要となりますが、租税条約の活用や契約書での対価区分により税負担を軽減できる可能性があります。

オフショア開発の税務処理は複雑であるため、契約段階から税務の専門家と連携し、取引内容と著作権の帰属を明確にしたうえで、適切な経理体制を構築していきましょう。

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