
オフショア開発は、IT人材不足の解消やコスト削減を実現できる有効な手段として、多くの企業が導入を検討しています。海外の優秀なエンジニアを活用することで、国内だけでは対応が難しい開発プロジェクトを推進できる点は大きなメリットです。
一方で、言語や文化の違い、政治的な不安定さ、情報セキュリティの問題など、国内開発では顕在化しにくいリスクが存在することも事実です。これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが、オフショア開発を成功に導く鍵となります。
本記事では、オフショア開発で想定される5つのリスクと、それぞれの回避策を詳しく解説します。さらに、リスクの低いおすすめの開発先も紹介するので、オフショア開発の導入を検討する際の参考にしてください。
オフショア開発には、海外に業務を委託するからこそ発生するリスクがあります。国内開発では問題にならない事項が、海外との協業では大きな課題になることも珍しくありません。
リスクを正しく理解しておくことで、事前に対策を講じることが可能です。ここでは、オフショア開発で想定される5つの主要なリスクを解説します。
オフショア開発では、委託先の国の政治・経済情勢がプロジェクトに直接影響を与える可能性があります。クーデターや政変が発生すると、通信インフラが遮断されたり、開発拠点が機能しなくなったりするケースも考えられます。
たとえば、ミャンマーは人件費の安さが魅力のオフショア開発先でしたが、2021年のクーデター以降、内政が不安定な状態が続いています。このような状況では、プロジェクトの継続が困難になるだけでなく、最悪の場合は開発をゼロからやり直す必要が生じることもあります。
また、為替変動による予算超過のリスクも存在します。委託先を選定する際は、政治・経済の安定性を十分に確認することが重要です。
言語や文化の違いは、オフショア開発における最大の課題の一つです。日本では「言わなくても伝わる」という暗黙の了解が存在しますが、海外ではこうしたハイコンテクストなコミュニケーションは通用しません。
指示や要望が正確に伝わらないと、期待した成果物と異なるものが納品されるリスクがあります。たとえば、日本固有の文化や概念をシステムに実装する場合、現地のエンジニアがその概念を理解していなければ、意図したとおりの開発ができません。
日本語が堪能なエンジニアであっても、日本の業界慣習やユーザーの嗜好を理解しているとは限らない点にも注意が必要です。
エンジニアのスキルや品質基準は、国によって大きく異なります。IT教育の水準や技術者の育成環境は国ごとに差があり、同じ職種名でも実際の技術レベルにばらつきが生じることがあります。
日本が求める品質基準は世界的に見ても高い水準にあり、海外のエンジニアにとっては過剰に感じられることもあるため、事前のすり合わせが欠かせません。また、ドキュメンテーションやコーディング規約への意識が日本とは異なるケースも多く、これが後のメンテナンス性に影響を与えることがあります。
品質基準を明確にし、ガイドラインを共有することで、この問題は軽減できます。
国内では「納期厳守」が当然という認識がありますが、海外ではこの意識が薄い場合があります。残業をしない文化が根づいている国では、作業が契約時間内に終わらなければ翌日に持ち越すことも珍しくありません。
日本の感覚で進捗管理をすると、開発が期待通りに進まないリスクが高まります。また、仕様変更への対応や追加要件の発生時に、想定以上のコストがかかるケースもあります。
ただし、無理に日本的な働き方を押し付けると、委託先との関係が悪化する恐れがあるため、相互理解を深めながらスケジュール管理を進めることが大切です。
オフショア開発の委託先は途上国や新興国が多く、セキュリティ意識やコンプライアンスへの認識が日本と異なる場合があります。ソースコードや機密情報の管理体制が不十分だと、情報漏洩のリスクが高まります。
特に、システム開発のソースコードは形のない成果物であるため、持ち出しが容易という特徴があります。エンジニアの入れ替わりが頻繁な環境では、離職者による情報流出のリスクも考慮する必要があります。
また、委託先が再委託をおこなっている場合は、さらにリスクが高まる点にも注意が必要です。
オフショア開発のリスクは、適切な対策を講じることで大幅に軽減できます。委託先の選定から、プロジェクト管理の方法まで、さまざまなアプローチが有効です。
ここでは、リスクを最小限に抑えるための具体的な方法を6つ紹介します。
委託先を選定する際は、政治・経済情勢の安定性を重視することが重要です。日本との外交関係が良好な国であれば、ビジネス上のトラブルが発生した際にも解決しやすい傾向にあります。
通信インフラが整備されており、停電や通信障害が少ない国を選ぶことも、プロジェクトの安定運営には欠かせません。また、IT産業を国策として推進している国は、エンジニアの育成環境が整っており、優秀な人材を確保しやすいメリットがあります。
カントリーリスクを軽減するために、複数の国に開発拠点を分散させる企業も増えています。
ブリッジSEとは、日本側の発注者と現地のエンジニアチームをつなぐ橋渡し役のことです。この役割を日本人が担うことで、言語や文化の壁による認識のズレを大幅に減らせます。
日本人同士のコミュニケーションでプロジェクトを進められるため、まるで国内のIT企業に発注しているような感覚で開発を進められる点が大きなメリットです。仕様の細かなニュアンスや、日本の業界慣習も正確に伝達できます。
日本人ブリッジSEの単価は現地人よりも高くなりますが、品質確保やプロジェクトの成功率向上につながるため、費用対効果は十分に期待できます。
オフショア開発では、要件定義や仕様書の作成が国内開発以上に重要です。曖昧な表現や抽象的な指示は、異なる文化背景を持つエンジニアには正しく伝わらない可能性があります。
仕様書には図解やワイヤーフレーム、具体的な画面イメージを盛り込み、言語に依存しない形で意図を伝えることが効果的です。また、期待する品質基準やテスト項目も明文化しておくと、認識のズレを防げます。
仕様が明確であれば、要件変更による手戻りも減り、結果的にコストと納期の両面でメリットが得られます。
オフショア開発では、予期せぬ遅延やコミュニケーションの手戻りが発生することを想定し、スケジュールと予算にバッファを設けることが重要です。国内開発と同じ感覚でタイトなスケジュールを組むと、品質低下や納期遅延のリスクが高まります。
一般的には、国内開発の1.2〜1.5倍程度の工数を見込んでおくと、余裕を持ったプロジェクト運営が可能です。また、為替変動による予算超過も考慮し、コストにも一定のマージンを設けておくと安心です。
余裕を持ったスケジュールは、現地エンジニアのモチベーション維持にも効果的で、結果的に品質向上につながります。
物理的な距離があるオフショア開発では、進捗の可視化が難しくなる傾向があります。定期的なミーティングや報告の仕組みを構築し、進捗をこまめに確認することが重要です。
日次または週次での進捗報告を義務付け、問題が発生した場合は早期に検知できる体制を整えることで、大きな手戻りを防げます。チャットツールやプロジェクト管理ツールを活用し、リアルタイムでのコミュニケーションを心がけることも有効です。
遅れが発生している場合は、早めにリソースの追加やスケジュール調整を検討し、プロジェクト全体への影響を最小限に抑える対応が求められます。
アジャイル開発は、短いサイクルで開発とフィードバックを繰り返す手法です。オフショア開発においても、このアプローチを取り入れることで、認識のズレを早期に修正できます。
小さな単位で成果物を確認しながら進めることで、最終段階で「想定と違う」という事態を防げます。また、要件変更への柔軟な対応も可能になり、変化の激しいビジネス環境に適した開発手法といえます。
ウォーターフォール型と比較すると管理工数は増えますが、オフショア開発特有のリスクを軽減する効果は大きいです。
オフショア開発先を選ぶ際は、コストだけでなく、政治的安定性や技術力、日本との相性なども考慮することが重要です。それぞれの国には特徴があり、プロジェクトの内容や目的に応じて最適な選択肢が異なります。
ここでは、日本企業にとってリスクが比較的低く、実績も豊富な3カ国を紹介します。
ベトナムは、日本のオフショア開発先として最も人気のある国です。国策としてIT人材大国を目指しており、政府は2025年までに110万人のIT技術者を育成する目標を掲げています。毎年約5万人の優秀なエンジニアが輩出されており、若い人材が豊富な点も魅力です。
親日国として知られ、日本語学習者も多いことから、コミュニケーションの障壁が比較的低い点も選ばれる理由の一つです。人件費は日本の1/2〜1/3程度であり、コストメリットも十分に期待できます。
時差は2時間と少なく、リアルタイムでのコミュニケーションが取りやすい環境にあります。Web系開発やモバイルアプリ開発に強みを持つ企業が多く、幅広いプロジェクトに対応可能です。
フィリピンは、ベトナムに次いで日本企業から注目を集めているオフショア開発先です。英語が公用語であるため、約9割の国民が英語を話すことができ、グローバル展開を見据えたプロジェクトには最適な選択肢といえます。
英語能力指数ではアジア2位を誇り、欧米向けのサービス開発や、多国籍チームでの開発に強みを発揮します。IT教育に力を入れており、Web系言語やデザイン分野に秀でたエンジニアが多いのも特徴です。
日本との時差は1時間と非常に少なく、成田から約4時間半でアクセスできる距離にあります。対面でのコミュニケーションが必要な場合も、気軽に訪問できる点がメリットです。
インドは、世界トップクラスの技術力を持つIT大国として知られています。IT技術者の数はアメリカに次ぐ世界2位であり、高度な技術を必要とするプロジェクトには最適な選択肢です。
GoogleやMicrosoft、Adobe、IBMなど世界的企業のCEOをインド系人材が務めており、その技術力は実績で証明されています。AI、機械学習、大規模システム開発など、高度な技術領域で特に強みを発揮します。
ただし、人月単価は他の東南アジア諸国より高く、コスト削減効果は限定的です。時差も3時間半とやや大きいため、リアルタイムでの連携には工夫が必要となります。高度な技術力を優先する企業に適した選択肢といえます。
まとめ
オフショア開発には、政情不安、コミュニケーションの齟齬、品質のばらつき、納期・コスト意識の違い、情報漏洩といったリスクが存在します。これらは海外に業務を委託するうえで避けて通れない課題ですが、適切な対策を講じることで大幅に軽減できます。
リスクを最小限に抑えるためには、政治的に安定した親日国を選ぶこと、日本人ブリッジSEを配置すること、仕様書を具体的に作成すること、スケジュールに余裕を持たせること、進捗確認を徹底すること、アジャイル開発を取り入れることが有効です。
ベトナム、フィリピン、インドはそれぞれ異なる強みを持っています。自社のプロジェクトの特性や目的に合わせて最適なパートナーを選定し、オフショア開発を成功に導いてください。
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