
国内のIT人材不足や開発コストの高騰を背景に、オフショア開発を検討する企業が増えています。ベトナムをはじめとする東南アジア諸国には優秀なエンジニアが豊富に存在し、コスト削減とリソース確保を同時に実現できる手段として注目を集めている状況です。
一方で、言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの課題や、品質管理の難しさから「思ったような成果が得られなかった」という声も少なくありません。オフショア開発を成功させるには、正しい進め方の理解と、事前の注意点の把握が不可欠です。
本記事では、オフショア開発の基本的な進め方から、契約形態の選び方、よくある失敗パターンと対策、成功のためのポイントまで体系的に解説します。自社でのオフショア開発導入を検討する際の参考にしてください。
オフショア開発を成功に導くためには、体系的なプロセスに沿ってプロジェクトを進めることが重要です。事前準備から開発開始、納品後の運用まで、各フェーズで押さえるべきポイントを理解しておかなければなりません。
ここでは、オフショア開発の基本的な進め方を6つのステップで解説します。
オフショア開発を始める前に、「なぜオフショア開発をおこなうのか」を明確にすることが重要です。コスト削減が目的なのか、リソース確保が主眼なのか、あるいは特定の技術力を求めているのか、目的によって最適な委託先や契約形態が変わってきます。
また、社内の意思決定者と責任範囲を明確にしておくことも欠かせません。プロジェクト進行中に判断が必要な場面で、誰が決定権を持つのかが曖昧だと、対応の遅れや方針のブレにつながりかねません。
さらに、オフショア開発では自社側にもプロジェクトを管理・推進するマネジメント体制が求められます。委託先に丸投げするのではなく、積極的に関与できる体制を構築しておくことが成功への第一歩です。
海外企業との協業では、日本企業間で通用する「察する文化」は期待できません。開発する機能や仕様について、自社内で十分に協議したうえで、詳細な要件定義書として文書化することが必須です。
曖昧な指示や口頭だけの伝達は、認識のズレを引き起こす原因となります。想定される機能や要件は必ず文章として残し、設計書、機能一覧、画面遷移図などの資料を整備しなければなりません。
要件定義の段階で手間を惜しむと、後工程での手戻りや追加コストの発生につながりかねません。「やさしい日本語」で「はっきり」「具体的に」伝えることを意識してください。
オフショア開発の委託先として人気のある国には、ベトナム、フィリピン、インドなどがあります。それぞれの国には特徴があり、コスト、技術力、日本語対応力、時差などの観点から自社のニーズに合った国を選定する必要があります。
| 国名 | 特徴 | 時差 |
| ベトナム | IT教育に力を入れており、勤勉な国民性。日本語学習者も多い | 2時間 |
| フィリピン | 英語力が高く、コミュニケーションがスムーズ | 1時間 |
| インド | 高度な技術力を持つエンジニアが豊富。大規模開発に対応可能 | 3.5時間 |
企業選定時には、技術力や実績だけでなく、日本語対応力、セキュリティ認証(ISO27001など)の取得状況、日本国内拠点の有無なども確認が必要です。複数社から見積もりを取得し、比較検討したうえで決定するのが望ましい進め方といえます。
オフショア開発の契約形態は、主に「ラボ型契約」と「請負型契約」の2種類に分けられます。プロジェクトの特性や自社の体制に合わせて、適切な契約形態を選択することが重要です。
| 契約形態 | 特徴 | 向いている案件 |
| ラボ型契約 | 契約期間中、専属チームを確保。仕様変更に柔軟に対応可能 | 中長期プロジェクト、仕様が流動的な案件 |
| 請負型契約 | 成果物の完成を目的とした契約。納品後にチームは解散 | 要件が明確な単発案件 |
契約締結時には、納期、修正対応の範囲、仕様変更時の追加コスト発生条件、支払い条件などを詳細に確認しなければなりません。不利な条件での契約を防ぐため、綿密なチェックが欠かせません。
契約締結後、まずはキックオフミーティングを実施します。対面が可能であれば現地訪問が望ましいですが、オンライン会議でも問題ありません。お互いを知り、共通認識を持つことで信頼関係の構築につながります。
プロジェクト開始後は、定期的なコミュニケーション体制の構築が不可欠です。週次のビデオ会議やチャットツール(Slack、Chatworkなど)の活用ルールを決め、進捗状況を常に把握できる仕組みを整えることが求められます。
また、BacklogやJiraなどの課題管理ツールを活用することで、タスク管理や工数管理、進捗管理を効率化できます。問題の早期発見と迅速な対応が、プロジェクト成功の鍵です。
成果物の検収では、仕様書との整合性を詳細に検証することが重要です。委託先の担当者立ち会いのもとで確認をおこなえば、不具合発見時に速やかに修正指示を出せるため効率的です。
自社単独での動作確認後に問題が見つかった場合、海外の開発チームへの報告や指示出しに時間を要します。検収段階でのコミュニケーションを密にすることで、手戻りを最小限に抑えられるのがポイントです。
納品後の保守運用体制についても、事前に取り決めておかなければなりません。リリース後に発生する不具合対応やシステムアップデートなど、継続的なサポートを受けられる企業を選定しておくと安心です。
オフショア開発には多くのメリットがある一方で、準備不足や認識のズレから失敗に終わるケースも存在します。失敗パターンを事前に把握しておくことで、同じ轍を踏まずに済む可能性が高まるものです。
ここでは、オフショア開発で特に多い失敗パターンとその原因を4つ紹介します。
オフショア開発で最も多い失敗原因が、発注側と開発側の間に生じる意思疎通のズレです。言語の壁に加えて、文化や商習慣の違いから、日本企業間では当たり前に通じることが伝わらないケースが多発します。
具体的には、仕様書に明記されていない「暗黙の了解」が伝わらず、期待と異なる成果物が納品されるケースが少なくありません。日本では説明不要と思われる機能やデザインのニュアンスが、独自に解釈されてしまうのが原因です。
また、ブリッジSEの日本語能力が不十分な場合、細かなニュアンスが正確に伝わらず、開発方向性のズレが生じることもあります。コミュニケーション体制の構築と、詳細なドキュメント整備が欠かせません。
納品されたシステムやアプリケーションが正常に動作しない、動作はするがパフォーマンスが悪い、バグが多いなど、品質面での問題もよくある失敗パターンの一つです。要件定義の曖昧さや、技術力不足の企業選定、丸投げによる品質管理不足が主な原因として挙げられます。
また、受けている教育の違いから、ソースコードのルールや手法が日本と異なる場合も少なくありません。不要な処理があったり、メンテナンスしにくい状態になっていたりすると、修正に多大な時間がかかってしまいます。
品質を担保するためには、開発の各フェーズでのテストを徹底し、定期的にレビューをおこなう体制の整備が不可欠です。
オフショア開発では、予定していた納期より遅れることがしばしば発生します。時間や納期に対する意識が日本と異なる文化圏では、残業してでも間に合わせるという感覚がない場合もあり、管理がうまくいかず遅延につながることがあります。
また、初期のスケジュール設計時に要件が整理されておらず、後から追加の開発が必要だと判明するケースも原因の一つです。委託国独自の祝日が重なったり、開発メンバーの入れ替わりが激しかったりすると、開発スケジュールが停滞しかねません。
こまめな進捗管理と、文化的な違いを考慮したスケジュール設計が重要です。
オフショア開発の目的の一つはコスト削減ですが、結果的に国内開発と同等かそれ以上の費用がかかる場合もあります。開発途中での仕様変更や追加工数、為替変動に加え、現地との調整コストや低品質による再開発費など、見積もり時に織り込めていない項目が積み上がるためです。
また、プロジェクト立ち上げ時にはイニシャルコストがかかることも見落としがちな要素です。メンバーの構成やルールの明文化など、体制構築やコミュニケーションに時間がかかるため、短期間のプロジェクトではコストメリットを享受できないこともあるのが実情です。
詳細な見積もりの取得と、隠れコストを含めた総額での判断が求められます。
失敗リスクを最小限に抑え、オフショア開発のメリットを最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントを押さえなければなりません。単なるコスト削減ではなく、長期的なパートナーシップの視点を持つことが成功の鍵です。
ここでは、オフショア開発を成功に導くための5つのポイントを解説します。
オフショア開発の成功には、詳細な要件定義とドキュメント化が欠かせません。設計書、機能一覧、画面遷移図、ワイヤーフレームなど、視覚的な資料を多用することで、言語の壁を超えた正確な情報伝達が可能になります。
特に重要なのは「やさしい日本語」での記述です。専門用語や曖昧な表現を避け、具体的かつ明確に伝えることを心がけてください。「適切に」「必要に応じて」といった曖昧な表現は、異なる解釈を生む原因となります。
また、ドキュメントは一度作成して終わりではありません。プロジェクト進行中も継続的に更新し、最新の状態を維持することが重要です。
オフショア開発では、定期的かつ密なコミュニケーションが不可欠です。週次のビデオ会議を設定し、進捗確認と課題の早期発見に努めることで、問題が大きくなる前に対処できます。
具体的なコミュニケーションルールとして、チャットツールでの返信期限の設定、日報・週報の提出タイミング、緊急時の連絡手段などを事前に取り決めておくことが必要です。
また、単なる進捗確認だけでなく、開発の方向性が本来の目的から外れていないかを確認し、必要に応じて改善点を明確に伝えることも重要となります。
オフショア開発の成否は、パートナー企業の選定に大きく左右されます。実績・技術力の確認はもちろん、日本語対応力、セキュリティ認証(ISO27001など)の取得状況、日本国内拠点の有無などを総合的に評価することが重要です。
特に、ブリッジSEの日本語能力とコミュニケーションスキルは重点的に確認すべきポイントです。細かなニュアンスを正確に伝えられるかどうかが、プロジェクトの成否を左右します。
また、過去の類似案件の実績や、既存顧客からの評価なども参考にしながら、長期的な関係を築けるパートナーを選定することが望ましいといえます。
初めてオフショア開発に取り組む場合は、スモールスタートが有効です。小規模なプロジェクトから始めることで、リスクを軽減しながらノウハウを蓄積できます。
プロジェクト開始後にコミュニケーションがうまく取れなかったり、仕様書の理解力に問題があることが判明したりした場合でも、小規模開発なら影響を最小限に抑えられるのがメリットです。
最初のプロジェクトを通じて委託先の実力や相性を見極め、信頼関係を構築したうえで、段階的に規模を拡大していく進め方が成功への近道となります。
オフショア開発で品質を担保するためには、ダブルチェック体制やテスト工程の明確化が不可欠です。エラーが出ないかという一般的なシステムテストに加え、メンテナンス性を考慮したコード品質の管理体制も重要となります。
具体的には、開発の各フェーズでのレビュー実施、単体テスト・結合テスト・総合テストの工程明確化、そして担当者立ち会いでの検収などが必要となります。
品質管理には手間とコストがかかりますが、後の大幅修正を防ぐための投資と考えてください。初期段階での品質確保が、最終的なコスト削減につながります。
オフショア開発は、IT人材不足や開発コスト高騰という課題を抱える企業にとって有効な選択肢です。ベトナムをはじめとする東南アジア諸国には優秀なエンジニアが豊富に存在し、適切に活用することでコスト削減とリソース確保を同時に実現できます。
一方で、言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの課題、品質管理の難しさ、納期遅延リスクなど、注意すべき点も多く存在します。成功のためには、明確な要件定義とドキュメント化、定期的なコミュニケーション体制の構築、信頼できるパートナー企業の選定が欠かせません。
初めてオフショア開発に取り組む場合は、小規模プロジェクトからスタートし、ノウハウを蓄積しながら段階的に拡大していくことで、リスクを最小限に抑えながら成果を最大化することが可能です。
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