会計・人事給与などのソフトウェアを提供するさくら情報システム様。
数年前からブライセンと一緒にオフショア活用に取り組んでいただいています。オフショア活用によるコストやスピード面のメリット、一定の成果をあげるまでに苦労された点、うまくいかなった点など、サービス事業本部HRS部 部長の下里祐司様、システム開発グループ 小林涼様にお話を伺いました。
下里部長: 「私たちの部署でオフショアを初めて依頼したのは、2015年頃で、あるプロジェクトの一部の機能の開発でした。その時、私たちがやりとりしていたのは日本の方で、実際の開発だけをベトナムで行う形式でした。その為、オフショアを利用しているという意識もあまりなく、また、品質的にも充分なものでした。そういった実績を経た上で、本格的に今のラボ型の、継続的な準委任形式へとステップアップしていったという経緯があります。このような経緯もあって、信頼感が醸成できていた為、最初のハードルは低かったと認識しています。」
下里部長:
「本格的なオフショアを始める前に1年間、日本とベトナムのブリッジとなるSEの方に、あらかじめ私どもの部内に常駐してもらい、システムの全体像などを学んでいただきました。そうした知見がたまった段階で、そのブリッジSEを通して、ベトナムに開発を依頼するという流れをとりました。
その後、いよいよベトナムへの依頼が始まるのですが、最初は私たちも発注するノウハウもなかったため、いきなり日本独自の法制度に基づいた機能を依頼してしまったんです。ベトナムでは日本の法律や商習慣がわかりませんから、仕様を詰めるのが難しかったようで、多少のコンフリクトがありました。逆になるべく法制度や業務要素の少ない機能を依頼すると、良いパフォーマンスが出るということがわかってきました。こちらも依頼の仕方のノウハウも積み重なって、今は良いパフォーマンスが出せているという状態です。」
下里部長: 「そうですね。私たちはシステム開発やシステム改善を常に行っているのですが、それとは別に、法改正に伴うシステム変更という作業も発生します。ですから、日本の法律をふまえた機能改修という、外国の方には難易度の高いことを少しずつでも理解してもらう必要がありました。当初は難しかった法律に関わる部分でも、だんだんと知見がたまってきて、依頼できる範囲も広がってきています。」
下里部長: 「弊社に常駐していたベトナム人の方が上級SEの方だったということもあって、日本人と変わらないくらいのコミュニケーション能力があり、さらにSEとしての技術も優れた方でした。当初は問題になっていた日本の法制度についても勉強してくれて、日本人SEに依頼するのと変わらないくらいの理解度で高いパフォーマンスを発揮していただき、非常に助かりました。」
小林様: 「私は一度、ベトナム人SEの方に日本の法律について教えてもらったことがあります(笑)。税務署に確認したらその通りでした。ベトナムの上級SEはそこまでできてしまうのかと、驚きでした。」
下里部長:
「実は以前、他社さんの仕事で中国のオフショアと直接やりとりをしたことがあったのですが、コミュニケーションやニュアンスの違いなどにとても苦労しました。いわゆる『行間』の汲み取りなどは、どうしても難しいので、かなり粒度の細かい要件を用意する必要がありました。こまかい文脈、機能のひとつひとつに対して、メールやテレビ電話で説明して、さらに事例まで出さないと正確に伝わらない。これらのやり取りで双方が疲弊してしまって、オフショアって本当に効率化になるのかな?と、疑問に思ったほどでした。
それに比べてブライセンのスキームだと、間に入る日本人とベトナム人のブリッジSEの方が行間を読みとってくれるので、まるっきりベトナムを意識しないで仕事ができるというのが大きなメリットでした。以前の苦労があったので、それと比べるとはるかに楽だと感じました。」
小林様: 「2017年に本格的にラボを立ち上げる際、テスト方法やドキュメントの残し方、報告方法などのスキーム説明などのために1週間ほど行きました。第一印象としては、真面目だな、と。常駐していたベトナムの方にも感じたのですが、良い意味で外国人っぽくないと思いました。外国の方はどちらかというと個人主義で、自分の仕事が終わったら周りを気にせず帰ってしまうイメージがあったのですが、自分に余裕があったら他の人に声をかけて手伝うとか、協力しながら仕事をしていましたね。それと、日本語の勉強もしっかりやっていて、勉強熱心でモチベーションが高いと感じました。」
小林様:
「フエはホーチミンと比べてもかなり田舎です(笑)。ベトナムでホーチミンを少し観光して、それに馴染んできたところでいざベトナム支社に行くと、近代的なホーチミンの街に比べ、のどかな風景に驚きました。その風景の中、ベトナム支社は大きく立派なビルで、警備員もおり、IDカードでの入室管理も徹底されていて、風景とのギャップにびっくりしてしまいます。フエの街の中にあって驚くほど先進的な環境でした。
ただ私がベトナム支社に行っている期間、ちょうどメンテナンス中かなにかでクーラーが動かず、ものすごく暑かった記憶があります(笑)。夏のベトナムは東京以上に暑いです。基本的には楽しかったのですが、それだけが大変でした。それでも後から考えれば良い思い出ですし、なによりベトナム人スタッフの方々と直接顔を合わせて話ができて、どんな人がどんな場所で働いているのかを知ることができたのは、とても良かったと思います。」
下里部長: 「今はワークフローの領域を依頼しているのですが、それ以外にも就業システムや人事給与の領域へも依頼範囲を拡張したく、ご相談しているところです。やはり人が入れ替わってしまうと、せっかく溜まったノウハウもゼロから蓄積し直さなければならないので、ベトナムでの人材確保をより確実にするためにも、依頼する領域を広げてボリュームを増やしていく予定です。」
下里部長:
「しっかりとした裏付けのある数値ではないのですが、日本だけでやったら10かかるコストが、オフショアにすると5~7くらいのコストで収まっていると思います。立ち上げ当初はパフォーマンスが発揮できず8割くらいだったところを、今現在では5~7割くらいまでにコストを抑えられている感覚があります。
将来的には双方の工夫によっては5割を切るくらいまで目指せるのではないかと考えています。具体的には、現在データの受け渡し方法の簡略化や開発環境の問題などで、効率が良くない部分があります。これらの環境を整えることでクリアできる課題もあるので、将来的にはさらにコストカットできそうです。」
下里部長:
「導入の段階で、そうしていったほうが将来的にも生産性があがりやすいというご提案をいただいたというのもありました。また、私たちの日本人SEが開発することを想定したドキュメント内容でも、ブリッジSEの方がベトナムで機能するように翻訳をし、オフショア先でも開発できるように整えてくれるので、弊社内の人的コストも含めて圧縮することができました。
私たちは、これまで申し上げたような体制の整備なども含めて、長期的な視点と取り組みでコスト減とパフォーマンス向上を実現しました。短期的な一括のオフショア開発でコストメリットを得たいという目的には、向かないかもしれませんね。
私たちはブライセンとの取り組みで、導入時には多少の苦労はありましたが、1年で立ち上げて一定のクオリティに達することができました。このスピードは、かなり早かったと自負しています。」
下里部長: 「そうですね。今まではベトナムの方ばかりだったのですが、今後はミャンマーの方にSEとして来ていただく予定です。私たちの部署以外でもベトナム人の採用を検討していて、ブライセンのグループ会社であるエージェント・プラスに相談したり、新人研修を一緒にベトナムでやらせてもらったりと、オフショアを通じて人材採用の幅が広がっていったのも、オフショアを利用した副次的なメリットでした。」
下里部長: 「ハイブリット体制というスキームとしては素晴らしいと思います。さらに改善をお願いするとすれば、ブリッジSEの方の採用とレベルアップですね。日本人であれ外国の方であれ、優秀な方であれば確実に高いパフォーマンスを発揮してくれます。たとえば、ブリッジSEの向こう側に4人のエンジニアがいたとして、普通の方だと4人分のパフォーマンスにしかならないものが、レベルの高いブリッジSEの方だと5人分、6人分ものパフォーマンスを出せるというのを実感したので、そういう方がどんどん来てくれたら嬉しいですね。」
さくら情報システム様とは、オフショアに取り組む以前から長年のお付き合いがあり、社内の状況もよく存じ上げていました。
オフショア導入前は、システムの導入・保守・開発とすべての工程をすべて社員の方が担っており、社内に疲弊の色が見えていました。そこで、社員の方はより上流工程に専念し、下流は我々のオフショアを利用していただくことで、社員の方々はより中核の業務に時間と能力を使っていただけるのではないかというのが、ご提案の狙いでした。
さくら情報システム様は、インタビューにもあるように、オフショアの活用方法を試行錯誤しながら、よりパフォーマンスの高いやり方を見出そうとしてくださっています。現在までにオフショアを使ったプロジェクトが一定の成果を挙げているのは、こうしたお客様のご協力あってのことと、感謝しております。
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*株式会社エージェントプラスは2019年7月に解散しました。
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