
システム開発やIT業務を外部に委託する際、「オフショア」と「オンショア」という選択肢があります。両者の最も大きな違いは、委託先が海外か国内かという点ですが、それに伴うコスト、品質、コミュニケーションの特性も大きく異なります。
近年、人件費削減や開発リソースの確保を目的に、オフショア開発を選択する企業が増えています。一方で、高度なコミュニケーションや迅速な対応が求められるプロジェクトでは、オンショア開発の価値が再認識されています。
本記事では、オフショアとオンショアの定義から、それぞれのメリット・デメリット、そしてどのような基準で選択すべきかまで詳しく解説します。自社のプロジェクトに最適な開発形態を判断する際の参考にしてください。
オフショアとオンショアは、委託先の所在地によって区別される開発形態です。それぞれの特徴を正しく理解することが、適切な選択の第一歩となります。
オフショアとは、海外のパートナー企業や海外開発拠点に業務や開発を委託する形態を指します。主にベトナム、フィリピン、インドなどアジア圏の国々が委託先として選ばれることが多く、人件費の優位性が最大の魅力です。
オフショア開発には、外部企業への委託だけでなく、海外に設立した自社拠点(子会社)での開発も含まれます。自社拠点の場合は、企業文化の統一やセキュリティ管理がしやすいという利点があるでしょう。
また、時差を活用することで24時間体制の開発が可能になります。日本が夜間の間に海外チームが作業を進めることで、開発スピードを加速できます。
オフショア開発は、コスト優位性と開発リソースの確保を同時に実現できる選択肢といえるでしょう。
オンショアとは、国内の企業や国内エンジニアに業務や開発を委託する形態です。委託先と同じ国内にいるため、地理的・文化的・言語的なギャップが少ないことが特徴といえます。
対面でのミーティングが容易であり、細かなニュアンスを含めた意思疎通が可能です。そのため、要件定義や仕様確認など、高度なコミュニケーションが必要な開発フェーズに適しています。
また、緊急時の対応や仕様変更への柔軟な対応もスムーズです。同じタイムゾーンで働いているため、リアルタイムでの問題解決が可能になるでしょう。
オンショア開発は、コミュニケーションの質と即応性を重視する場合に最適な選択肢です。 ただし、人件費が高い傾向にあるため、コストは割高になります。
オフショアとオンショアには、それぞれ異なる強みと弱みがあります。プロジェクトの成功には、これらの特性を理解した上での選択が不可欠です。
オフショア開発の最大のメリットは、人件費の低さから工数を確保しやすい点です。日本国内と比較して2分の1から3分の1程度のコストで開発を進められるため、大規模開発や長期保守プロジェクトに向いています。
国内のエンジニア不足を補う手段としても有効です。日本では獲得が難しい専門スキルを持つエンジニアを、海外市場から調達できる可能性があります。また、複数の開発チームを並行稼働させることで、開発期間の短縮も実現できるでしょう。
一方、オンショア開発の強みは、コミュニケーション精度と品質の高さにあります。言語や文化の壁がないため、要件の認識齟齬が生じにくく、期待通りの成果物が得られやすい傾向があります。
要件変更や障害対応など、即応性が求められる現場ではオンショアの優位性が顕著に表れます。 リアルタイムでの調整が可能なため、プロジェクトの軌道修正もスムーズです。
オフショア開発では、言語・文化・時差による認識ズレが起きやすいという課題があります。仕様書の解釈が異なったり、日本特有の商習慣が理解されなかったりすることで、手戻りが発生する可能性があります。
また、品質のばらつきやレビュー負担が増えるリスクも考慮すべきです。日本と品質基準が異なる場合があり、成果物の検証に想定以上の工数がかかることもあるでしょう。ブリッジSEの配置やコミュニケーションルールの整備など、管理体制の構築が必要になります。
一方、オンショア開発の最大のデメリットは高コストです。人件費が高いため、開発規模を拡大しにくく、予算制約の厳しいプロジェクトでは選択肢から外れることもあります。
国内のエンジニア不足により、希望するスキルセットを持つ人材の確保が難しい場合もあります。 とくに専門性の高い技術領域では、適切なリソースの調達に時間がかかる可能性があるでしょう。
オフショアとオンショアの選択は、プロジェクトの特性や自社の状況によって異なります。複数の観点から総合的に判断することが重要です。
要件が複雑で頻繁な仕様変更が予想される新規開発では、オンショアが適しています。要件定義や設計フェーズでは、密なコミュニケーションが成功の鍵となるため、言語や文化の壁がないことが大きなアドバンテージになるためです。
一方、既存システムの追加開発や運用保守は、オフショアの強みが活きる領域です。仕様が明確で、定型的な作業が中心となる場合、コスト優位性を活かして効率的に進められるでしょう。
開発フェーズによって使い分ける戦略も有効です。要件定義や基本設計はオンショアでおこない、詳細設計以降の実装フェーズをオフショアに委託するハイブリッド型のアプローチも広く採用されています。
プロジェクトの性質とフェーズに応じた柔軟な選択が、成功確率を高めます。
限られた予算で多くの工数を確保したい場合は、オフショア開発が有力な選択肢です。大規模開発や長期プロジェクトでは、コスト削減効果が顕著に表れます。
ただし、オフショアでもコミュニケーションコストや品質管理コストが発生することを忘れてはなりません。ブリッジSEの配置や頻繁なレビューが必要になるため、単純な人件費差だけで判断すると予算超過のリスクがあります。
品質やスピードを最優先する場合は、多少コストが高くてもオンショアを選択すべきです。市場投入のタイミングが重要なプロジェクトでは、手戻りのリスクを最小化することが結果的に全体コストを抑えることにつながるでしょう。
予算と品質のバランスを見極め、プロジェクトの優先順位に応じた判断が求められます。
オフショア開発を成功させるには、ブリッジSEの存在や現地とのコミュニケーション能力が不可欠です。日本語と現地語の両方に精通し、技術的な知識も持つブリッジSEがいれば、認識齟齬を大幅に減らせます。
また、仕様書の作成スキルやドキュメント管理の体制も重要です。口頭や暗黙の了解で進めてきた従来の開発スタイルでは、オフショアでの成功は困難でしょう。明確な仕様書と管理プロセスを整備できる体制が必要です。
こうした体制が整っていない企業は、まずオンショアで開発を進める方がリスクが低いといえます。オフショアに挑戦する前に、社内のドキュメント文化やプロセス管理を整備することが先決です。
自社の組織能力を客観的に評価し、実現可能な選択をすることが重要です。
機密性の高いデータや個人情報を扱うシステムでは、オンショアの方が望ましい選択です。国内であれば、日本の法律や規制に基づいた管理が可能であり、監査や現地確認も容易に実施できます。
金融機関や医療機関など、厳格なセキュリティ要件が求められる業界では、オンショア開発が標準的な選択となっています。情報漏洩のリスクを最小化するため、物理的・法的な管理が重要です。
一方、一般的な業務システムやバックエンド処理であれば、適切なセキュリティ対策を講じることでオフショアでも対応可能です。機密情報を含まないモジュールを切り分け、オフショアに委託する戦略も有効でしょう。
セキュリティ要件を明確にし、リスクを許容できる範囲で判断することが重要です。
オフショア開発とオンショア開発は、それぞれ異なる強みと弱みを持つ開発形態です。オフショアはコスト優位性と開発リソースの確保に優れ、オンショアはコミュニケーション品質と即応性に強みがあります。
選択の基準は、プロジェクトの種類・フェーズ、予算・規模、自社のコミュニケーション体制、セキュリティ要件など多岐にわたります。単一の基準ではなく、これらの要素を総合的に評価することが重要です。
また、オフショアとオンショアを組み合わせたハイブリッド型のアプローチも有効な戦略といえます。プロジェクトの特性や自社の状況に応じて、最適な開発形態を柔軟に選択することで、品質とコストの両立が実現できるでしょう。
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